入れ歯と認知症の関連について
認知症と口腔内の健康とになんらかの関係性があるのではないかという研究は、以前からいくつかされています。
確かに物を噛むという行動が脳に刺激を与え、健康寿命を延ばすというのは理屈てきにもそうだろうと思う方も多いですよね。
東北大学の医学部と歯学部の共同研究では、10年ほど前から、歯を多く失ったままの高齢者ほど大脳の海馬付近の容積が減少するという現象を突き止めています。
当時仙台市で行なわれた合同調査では、認知症の疑いが持たれた高齢者は、
「歯の残存数が平均より少なく、健康な高齢者群に比べると平均で5.5本ほど少ない」
という調査結果となりました。
噛み合わせと全身機能
もちろん高齢になってもご自分の歯が残せるように日頃からメンテナンスを行うことはとても大事なことですが、さまざまな理由で自分の歯を失ってしまったとしても、きちんと代わりとなる入れ歯を使うことで認知症を予防することが出来るのであればそれに越したことはありません。
実際に当院でも、体のバランスが悪く、杖を使用されていた患者様がいました。入れ歯を作って噛み合わせが改善されたことで全身の機能が改善し、全体のバランスが取りやすくなって、杖を使わないで歩けるようになられた事例もあります。
口の中の健康、そして物をしっかり噛むという行為が、口の中だけでなく脳を含め全身の機能に直結しているということを証明する事例と言えるでしょう。
しっかりと噛める歯があるなら、それが天然の歯であっても人工の歯であっても、ちゃんと機能します。
認知症は予防が一番です。嚥下障害などを起こさないためにも、口腔ケアは大事です。
咀嚼機能が脳の健康につながるという研究は、いま世界中で行われているのです。
認知症と入れ歯の関係
このように認知症と入れ歯とは深い関係があります。もしお身内に認知症の方がいらっしゃる場合には、入れ歯の使用やメンテナンスについては、注意深くケアをして上げて下さい。
認知症の方は入れ歯をはめたまま自分の歯と同様に歯磨きしてしまい、それでお口のお掃除をおしまいにしてしまう方もありますので、きちんと入れ歯を取り外して、入れ歯も残った歯も清掃する必要があります。
ただ、入れ歯をはずすように伝えても、ご本人が入れ歯をしていることを頑として認めない場合もあるようです。
まとめ
虫歯や歯周病の心配もありますし、入れ歯に破損があったり、口腔内に異常があったりしてもご本人が気付かれない場合もあります。
もしうまくケアが出来ないようであれば無理はせず、歯科医院へ行って洗浄ケアやメンテナンスをきちんと受けられることが大切です。
ご自分のみならず、お盆やお正月等、帰省された時に、ご両親や近しい親族の方が、歯を抜いたままにしていたり、合わない入れ歯を使用しているようでしたら、上記のような歯と脳の働きの話をお伝えいただき、歯科への相談をおすすめしてみてはいかがでしょうか?